公的年金制度とは世代間扶養が目的
公的年金制度(国民年金・厚生年金保険)は強制加入ですが、どうして加入を義務化されているか知っていますか?
それは、世代間扶養を目的としているからです。
年金は、日本に在住する全ての人に関係することなので、しっかり理解しておく必要があります。
私的年金と公的年金の違い
私的年金とは、保険会社などが販売している個人年金のことで、「積立型」と「一時払型」があり、加入するか否かは個人の自由です。
加入した場合は、収入から個人年金の保険料を控除できるので、所得税と住民税を減らすことができ、節税効果があります。
一方、公的年金制度の種類には国民年金と厚生年金保険があり、条件に該当したら強制加入となります。
以前、公務員や私学教職員は共済年金に加入していましたが、民間に比べて優遇され過ぎているという理由で、2015年10月から共済年金は厚生年金保険に一元化されました。
この公的年金制度も節税効果はありますが、こちらは20歳になるか、20歳前でも厚生年金保険の適用事業所で働く場合に加入させられるという点で、私的年金とは違います。
では、なぜ、公的年金制度に強制加入させられるかというと、公的年金制度が世代間扶養という考えに基づいて存在しているからです。
世代間扶養とは?
国民年金法1条には、この法律の目的が規定されています。
「日本国憲法25条第2項に基づき、老齢、障害、死亡によって国民生活の安定が損なわれないように、共同で防止する。そのために、必要な給付を行う。」
厚生年金保険法第1条にも、対象者を労働者に変えただけの同じような規定があります。
そして、日本国憲法25条第2項は次のとおりです。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
つまり、国民年金法・厚生年金保険法の1条で、「お年寄り、障害者、遺族をみんなで助けましょう。そのために給付を行います」と定め、日本国憲法25条第2項に基づいて、それを実現するために国が管理するとしているのです。
実際は、働き盛りの現役世代が保険料を負担し、その徴収した保険料等を使って、老齢・障害・遺族となった人に年金を支給しています。
この、世代を超えて支え合うシステムが、世代間扶養です。
公的年金制度の問題点
公的年金制度は、働いている現役世代が払う保険料を、年金に充てています。
実際にはそれでは足らず、保険料の他に、「基礎年金拠出金」「国庫負担」「積立金の運用収入」で賄っている状態です。
少子高齢化が進む日本において、保険料は確実に少なくなっており、かと言って保険料を上げれば若い世代に負担が掛かって損をしてしまいます。
政治家は「公的年金制度の破綻はない」と言い切りますが、破綻しなくても大損する可能性はあり、損する年金に対して保険料を納めたいと思う人はいません。
保険料を納めている人は、法律で定められているから仕方なく納めているか、強制徴収されているだけです。
この公的年金制度の問題を何とかしなければなりませんが、少子高齢化がすぐに解消されないだけに、簡単に解決しないでしょう。
公的年金制度の歴史
国民年金法と厚生年金保険法の歴史は、次のとおりです。
- 昭和17年6月 労働者年金保険法を施行
- 昭和19年10月 労働者年金保険法を母体として厚生年金保険法を施行
- 昭和34年11月 年金が適用されていなかった自営業者等に国民年金法を施行
- 昭和34年11月 70歳以上の者に無拠出型の老齢福祉年金を支給開始
- 昭和36年4月 拠出型年金を開始
- 昭和61年4月 基礎年金を開始
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